馬術コラム

Part4 基本の習得と馬に対する慣れ

騎手の進歩のために大切なのは、基本の習得と馬の動きに慣れることです。それでは馬に慣れるということは一体どういうことでしょうか。

初めは馬に触れ、手入れや馬装(装勒、装鞍、厩舎作業)などを通して馬に数多く接することです。これらの体験から馬に関する予備知識を得たり、馬の動作や性格や心理などを観察することができます。それによって、馬という動物への理解と愛情が湧いてきます。このことが、その後の騎乗時においても技術向上においても大変役に立ってきます。毎日馬に乗っている私達のような者にとっても、こうした馬との関わりを通して、しばしば思いがけないヒントを得ることができます。

騎乗時には、怖がらずに大いにリラックスして乗ることです。もし初心者が騎乗時に恐怖心をもっていれば、身体は硬直し拳は上がり、手綱を引っ張ることになります。さらには、膝や踵も上がってバランスが乱れてしまいます。そうすると馬は苦痛を感じ、前へ進まなくなったり、または、敏感な馬は走り出してしまいます。そうなると騎手はさらに不安になり、ますます身体を硬直させるという悪循環に陥ります。ですから、最初は多少怖くても落ち着いて馬の動きに慣れるようにしましょう。しばらくするとバランスがとれるようになりますから怖がらずに指導者の声に耳を傾けてください。

よく鞍数を増やすことが技術向上に役立つと言いますが、全くその通りです。鞍数を増やすというのは、多くの馬に乗ってそれぞれの馬の性格や動きに慣れるということで、そのことが後日いかなる状況においても慌てずに馬の状態を判断し、対処できる基になるからです。

そしてこの鞍数に併せて大切なことは、ある一定の期間焦らずじっくり乗るということです。進歩というものは、正しい方法によってじっくり入念に行うことで得られるものです。頭で理解しているようでも、実際には身体が思ったよりも動かないことがよくあります。やはり自分の身体で体得して初めて理解できるものなので、時間をかけて良く《感覚する》ことが大切です。上手くいかなくても、焦らずじっくり乗り続けていきましょう。

このことは、我々の日常生活においても同じことがいえるのではないでしょうか。以前解らなかったことが、後になって解るということが良くあります。物事が消化するのには時間がかかります。馬に乗る場合もそれと同じで、数多くの馬に乗ってくるとそれぞれの馬には多かれ少なかれ似たところがあります。経験と慣れによって、どんな馬でもある程度は乗りこなすことができるようになります。

もうひとつ重要なのは、基本を大切にするということです。絶えず基本に忠実に、馬の動きをよく感じながら乗りましょう。もちろん、騎手の感覚とセンスが良ければより上手に乗れるでしょう。

基本がすべてではなく、また一つの方法しかないということではありません。しかし暗中模索の状態で練習してもあまり効果は望めません。初めはしっかりと基本的な騎乗法をマスターし、その中で自分自身の感覚の養成をしていきましょう。そうすれば、騎手の技術は進歩し、感覚も良くなっていくでしょう。

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