馬術コラム

Part8 トレーニングスケール(調教の6段階)

馬の調教とは、それぞれの用途・目的に応じてその馬の能力を最小限の力で最大限に発揮することであり、それは秩序正しい体育訓練(ジムナスティック・トレーニング)を通して行われます。このことは、初心者から上級者、競技ライダーや審判員、その他馬に携わるすべての人が理解するべき事柄です。その結果、馬は騎手の扶助に対して従順でリラックスし、安全で健康的な乗馬(ウエルフェア)につながります。

「調教の6段階」は馬の調教や競技における根本原則であり、すべての出発点である。

《 調教の6段階 》

1.歩調(リズム)

歩調とは三種の歩法(常歩・速歩・駈歩)内における動きの絶対的な調和である。

  ◊ 速さが一定である。
  ◊ 常歩は4節で大股な運歩である。
  ◊ 速歩は2節で上下振動のある運歩である。
  ◊ 駈歩は3節で躍動的な運歩である。

*後退は空間期のない斜体の2節のスムースな運歩である。

2.緊張の緩和(サプルネス)

緊張の緩和とは馬のすべての筋肉組織や腱、及び諸関節をほぐし、馬の精神的、肉体的な緊張を取り除くことである。

  ◊ 柔軟運動課目の利用。
  例:自由常歩、軽速歩、前傾騎乗、輪乗り、レッグイールディング、前肢旋回、キャバレッティ作業など。
  ◊ リラックスしている馬は三種の歩法において手綱を伸ばしても、急がず頭頸を前下方へ伸ばし、一定のリズムとテンポで運動を続ける。
  ◊ 背が柔軟で、騎手の推進が可能である。
  ◊ 呼吸が静かである。

3.ハミ受け(コンタクト)

ハミ受けとは、騎手の拳と馬の口との間に絶えず一様な連絡(コンタクト)がある状態をいう。

  ◊ 馬は騎手の拳に対して譲りを示し、ハミを味わったり求めたりする。
  ◊ 馬の口唇に軽い唾液(チューイング)が見える。
  ◊ ハミを受けている口元が安定している。

4.推進力(弾発) (インパルジョン)

推進力とは馬の後肢の活気ある馬体下への踏み込み(カダンス)であり、それが力強い推進力となって現れる。

  ◊ 馬の動きにより確かなリズムとテンポが生じ、馬の背は柔軟かつ弾力的になる。
  ◊ 半減却扶助の利用と必要性。
  ◊ 歩幅の増大が可能。

5.真 直 性(ストレイトネス)

馬が真直ぐであれば、直線上においても曲線上においても、馬の左後肢は左前肢の方向に、右後肢は右前肢の方向に踏歩していく。

  ◊ 輪乗りの開閉運動を利用して馬に真直性をとりつける。
  ◊ 真直性が確立されると、後躯からの推進がより速やかに前方へ伝わる。
  ◊ 馬には生まれつきの「歪曲(ゆがみ)」がある。
  ◊ 「肩を内へ」は調教の基礎である。
    
*馬に真直性をつけるために「肩を前」の作業をすることはとても有効である。
 また、「肩を前」は「肩を内へ」の準備作業でもある。

6.収縮(コレクション)

収縮とは後躯の沈下と後肢の活発な体下への踏み込みであり、馬は馬自身の体重と騎手の体重を後躯に受けながらも、その負重力が推進力となり得る状態をいう。

  ◊ 後躯屈撓は、股関節-膝関節-飛節の角度によりなる。
  ◊ 馬のバランスは、より後躯にある。
  ◊ 馬に収縮を求める時期は、調教を始めてから約1年半から2年くらい経ってから可能。
  ◊ 収縮運動課目の利用。
  例:後退、反対駈歩、ターン・オン・ザ・ホンチズ、シンプルチェンジ(駈歩-常歩-駈歩)肩を内へ、など

*馬が正しく体勢を理解してくれば、後躯の沈下(後躯屈橈)が現れ、それに伴って前躯起揚が生じ、セルフキャリッジを示すようになる。

  ◊ 項は最頂点になる。
  ◊ 関係起揚(正しい)と絶対起揚(誤り)。
  ◊ 歩度の変換によって項の位置も変わる。

*透性過とは馬体全体のいずれの部分にも硬さがなく、馬体の前後左右が全く均等な柔軟性を得ている状態をいう。
   
 ◊ 透過している馬の状態においては、騎手の扶助が後方より前方へ速やかに伝わる。
(後躯↔背↔項 ↔口)

 ◊ 前後左右の運動が均等に実施できる。

以上6点が必要不可欠の事柄ですが、中でも特に大切なことは馬が絶えずリラックスしていることです。
リラックスはすべてのスタートライン!

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