計画的な自由飛越は、障害馬の調教においてとても重要な要素を含んでおり、訓練上において良い効果を与えます。自由飛越の目的は、馬の背の柔軟と背筋力の鍛練としなやかさの促進にあります。そして、それによって馬は騎手の扶助操作に束縛されることなく、自分自身で踏み切りを判断し、かつ自然なバランスをもって飛越することができます。
若馬においては、騎乗しての障害飛越のための準備作業として役立ち、さらには馬自身の飛越能力の判断と、その馬の体力の確信を得ることができます。古馬においては、障害飛越に対する新たな飛越意欲を得るのに役立ちます。
そのほか、自由飛越は馬全体の柔軟性としなやかさ、さらには動きの機敏性を養うのに役立つので、障害馬ばかりでなく、馬場馬(特に若馬)にも有益です。
自由飛越は、一般的に特に若馬においては1週間に1~2度行うことも有効です。自由飛越に先立ち、馬場内(屋内馬場または高い塀のある馬場)の長蹄跡の中間に、壁に沿って1個の障害物を置きます。そして、馬の逃避を防ぐために壁に平行して長く柵を置き、さらに四角に横木を置いて丸みをつけます。これによって馬の逃避や膠着を防ぎ、速やかに馬を障害物に向かわせることができます。障害物は立体感のあるもので、初めは低い障害から始め、徐々にその要求を高めていきます。
自由飛越を円滑に進めるために、3~4人の助手を馬場内に配置します。その後、馬を馬場内に誘導しますが、事故防止のための装備を怠らないようにします。特に馬の四肢には肢巻きまたはプロテクター、そしてわんこうを装備して四肢を保護し、さらには馬を誘導しやすように頭絡または水勒(手綱を首に巻く)を付けます。
このようにして準備が整ったら、馬に馬場内の様子に慣らすために引き馬をしたり、放して馬場内を自由に行ったり来たりさせます。初めての自由飛越を行う若馬の場合は、左手前にて初め1本の地上横木を通過させます。その後障害物を X 状に組み立てて飛越させます。このとき、助手は引き手を持って、速歩にて障害物に誘導し、ある一定の地点まで来たら曳手を抜いて馬を放します。このとき、待機している助手は、馬を音声と追いムチで静かに障害物へ追い込みます。
この際、基本的には馬を速歩で障害へ向かわせますが、もし馬が静かな駈歩になったら、そのまま駈歩で障害に向かわせても構いません。
しかし、低障害物においてはできるだけ速歩で飛越させます。速歩からの障害飛越は、馬の障害に対する注意力および頭頸の前方への伸展と、背の盛り上がりを養うのに大変効果があります。しかし、初めて自由飛越を行う馬の場合は馬の欲する歩度を尊重します。
このようにして馬が落ち着いて上手に飛越したら、馬に人参などをあげて愛撫します。その後徐々に障害の高さを上げていきますが、初めは1mくらいの高さまでにとどめ、馬の飛越意欲を掻き立てたところで、その日の作業を終えます。後日は、能力と状況に応じて高さや幅を増し、さらには連続障害へとその要求を高めていきますが、決して無理な要求は避けましょう。
また、もし馬が小さな障害物で拒止するようなら、障害物まで慎重に速歩で誘導します。このようなときは馬を急がせない方がよいです。また近すぎる飛越も避けます。これらはすべて馬を不安にさせたり拒止したりすることにつながりますので注意しましょう。もし馬が2度続けて拒止するようなら、障害を取り外し、横木のみを地上に置いて、その地上横木を不安なく通過するようになったら、再び障害物を構成し直します。障害物は立体感があり傾斜のついているものが、馬にとって飛越しやすく安全です。この自由飛越は馬体の柔軟と障害物の馴致、そして馬の飛越能力の見極めが目的です。馬を怖がらせないように細心の注意を払って作業を行いましょう。